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IVH基板 設計事例紹介

今回のブログは、IVHを使用した基板設計の事例紹介をさせて頂きます。

まず、IVH(Interstitial Via Hole)とはなにかですが、
・・・ざっくり言うと、全層を貫通していないVIAのことで、
大きく2種類に分かれます。

1つ目は表層から内層の接続で、ブラインドVIA(Blind Via)
2つ目は内層から内層の接続で、表層に現れない埋め込みVIA/ベリードVIA(Buried Via)
となります。

ブラインドVIAとベリードVIAの断面イメージ

(この2種類のIVHの違いについては、また別の記事でご紹介します)

弊社では通常、ブラインドVIAを使用します。基板層数を半分にし
8層の場合、上層L1-L4、下層L5-L8で分けた構成となります。
<下図参照>

上層L1~4と下層L5~8で、別の回路を配置・配線することが可能になり、
高密度化が可能になります。

他にも様々な組み合わせは考えられますが、工場の設備等によっては製造出来ない
組み合わせも存在しますので、設計構想段階でのすり合わせは必要になってきます。

その中で、弊社で採用した特殊な事例をご紹介します。
目的としては、ベタ面を広くとることで電源・GNDの安定化に加え、
上層回路と下層回路の完全分離とノイズ対策の為に採用しました。
<下図参照>

①L5、L6に上層・下層で使用するIVHのVIAがない為、ベタ面を広く取ることで、
 電源・GNDの安定化につながる
②L5、L6に電源・GNDのベタ面を設けることで上下層の分離(回路的な分離)が可能
③上層と下層をベタ面で分離するため、ノイズ対策を実施しやすい
といったメリットがあります。

元々は、多ピンのBGA部分の電源強化の為に対応した事例となります。

この図の通り、L5には信号VIAが無い為、プレーン(ベタ面)を広くとることが可能です。

デメリットももちろん存在します。
①L1~4、L7~10層と、L5,6層でプレス回数やメッキ回数が異なる
②積層ズレと言った製造上の不具合が発生しやすくなる
といったもので、製造難易度が上がることです。

弊社では今回のIVHによる層構成の検討や、以前の記事で紹介させて頂いた基材の
選定など、ノイズ対策を含めた高速ディジタル設計を得意としており、基板工場と
連携することで、設計難易度と製造難易度を両立する対応を行っております。

ご興味ありましたら是非お問い合わせください。

@kitaoka

電源・信号の重畳(ちょうじょう)について

今回のブログは、信号と電源の重畳(ちょうじょう)について、紹介させて頂きます。

例として、
PoC (Power over Coax)
PoE (Power over Ethernet)
等、信号線に電力を重畳する例や、

PLC (Power Line Communications)
のように、電力線に信号を重畳する例があります。

どちらも信号と電源を1本のケーブルで接続できたり、
敷設済みのコンセントを通じて通信出来たりと、非常に便利です。

この信号と電源の重畳と分離は基板設計上で物理的に
工夫されているので紹介させて頂きます。

同軸タイプの「PoC」を例に挙げてみます。

ホスト機器側で、電源と信号の重畳を、
ターゲット機器側で、電源と信号の分離を行う回路例です。

同軸ケーブル1本で、接続し、ホスト側から電源を給電する為、
ターゲット機器側にコンセント等の電源供給設備が不要になります。

数十Wの電源と、インピーダンスコントロールの必要な高速信号を
同居させるわけですから、アートワーク上で工夫しないと、
信号が大きく減衰したり、反射やノイズの影響を受け、正常に通信できないこともあります。

実際に、Fakra規格の通信が正常に動作せずに困っているとの相談を受けたことがあります。
回路図上は問題となるところが見受けられず、アートワークデータを確認したところ、
明らかに反射の影響が大きく出るデータになっており、信号の重畳・分離を考慮して
設計されておりませんでした。
弊社にてアートワーク設計を見直すことで、正常動作し喜んでいただけました。

ポイントとしては、「反射を起こさない(スタブを作らない)」、
「インピーダンスコントロールを行う」、「部品の適正な配置」
と言った、一般的なことではあるのですが、知識が無いと難しいのかもしれません。
また、ターゲット機器は物理的制約(小型化)が大きいこともあり、設計自体の
難易度が高いことも多いかと思います。

ご興味あれば是非お問い合わせください。

@kitaoka