基板設計のブログ

Altium Designerの運用(アートワーク設計)

Altium Designerの運用について、今回はアートワーク設計について紹介します。

 

 

導入で触れましたが

(簡易)自動配線
等長配線
シミュレーションツール

 

 

など、設計者が使いたいツールが豊富に内蔵されており、
「軽く確認したい」という際には威力を発揮します。
とはいっても、自動配線ツールやシミュレーションツールも
事前準備に手間がかかるのには変わり有りません。
等長配線ツールにしても、思い通りにいかないことも・・・無くは無いですが、
標準的に組み込まれているので、いざという際は使えます。

 

また、導入後に感じた不満点も挙げてみます。

・各コマンドに対するレスポンスが微妙に悪い。
・慣れ・・・という部分が大きいかもしれませんが、全体的な操作感はそれほど良くない。
・ツール自体が非常に重く、特にCADのBootに非常に時間がかかる。

と、いった点でしょうか。

複数のファイルを次々にオープンし確認する・・・
と言った使い方には向いていないように感じます。
(普通は、そういった使い方をしないので個人的な感想です)

個人的に、普段は別のCADをメインで使っているため、第三者チェック等で稀に使用する際に
すこ~~~しストレスを感じたり感じなかったり。^^;;;

@kitaoka

Altium Designerの運用(ライブラリ)

運用を進めていくうえで、良かった点・悪かった点を紹介します。

今回はライブラリについてです。

・良かった点

先ずは導入でも触れましたが、ネット上で公開されているクラウドベースの
ライブラリデータの豊富さです。
何といってもこれを語らずにはいられない!・・・と、個人的に思っています。

シンボル・フットプリントを公開しているサイトも存在はしますが、
エクスポート~インポートにワンクッションが発生するのに比べ、
シームレスに使用できるのが非常に便利です。

とはいえ、回路シンボルのみ存在し、フットプリントや3Dデータが登録されていない
ケースもあって、残念な思いをすることも・・・
(贅沢になっています^^;)

但し、カタログページへのリンクがあったりするので、何かと便利に使っております。

 

・悪かった点

Altiumだから・・・・と言うわけではないのですが、既存ライブラリの移行です。

CADが変わるということは、データの互換性も基本的にありません。
その為、毎度毎度、運用に頭を悩ませることとなります。

コンバーターツールも存在しますが万能ではなく、属性データ等の欠落がある為、
データの補完が必要となります。
使えないというわけではないのですが・・・^^;

現状、弊社ではクラウドベースのライブラリと、新規での追加を併用して運用しております。

次回へ続く

@kitaoka

Altium Designer の導入~運用その1(後編)

前回に引き続き、Altium Designerの紹介、導入の後編となります。
(前編はこちら)

4.豊富なツール構成

ご存じの方も多いと思いますが、AltiumはPCB設計のツールだけでなく、
様々なツールが同梱されています。
例としては、

・回路図のエントリー
・3D(step)データの入出力
・ODB++などのCAM入出力

PCB設計の支援系では

・簡易ルーター(自動配線)
・SIシミュレータ(伝送線路シミュレーター)

などがあり、
回路設計~PCB設計~Simulation~CAM
の、垂直統合が可能です。

・・・が、現実的には各ツールを紐付けさせるライブラリの構築が、やっぱり大変です。

5.アルティウム市場

英語圏(オーストラリア→アメリカ)で開発されたツールでもあることから、
やはりワールドワイドで展開されています。
ベトナム市場においても、教育現場などで採用されていることもあり、
多くの学生さんたちは、見て触れたことの有るCADのようです。

Altiumのコミュニティーも活発であり、Q&Aの対応も早いです。

総じて、Protel時代のイメージからは刷新され、使い手・使い方にもよりますが、
正直よくできたツールかと思います。
また、Optionとなりますが、cloudツールを用い、各国の拠点から
各設計フェーズのエンジニアたちが集い、オンラインで設計している事例もあり、
このご時世にもマッチしているように見えました。

ただ、使いこなすには英語能力がかなり必要です・・・^^;

@kitaoka

Altium Designer の導入~運用その1(前編)

設計実績も増えてきたこともあり、事例なども含め、
改めてAltium Designerの紹介をしていこうと思います。

先ずは以前の記事
基板設計CAD(Altium Designer)で3D(STEP)データ作成!
でも少し触れましたが、導入についてのお話しです。
 

1.少なからず、Altium Designerでの設計の話が有った。

 導入後に受けた印象ですが、思った以上に回路設計CADとして
 使用されているメーカーが多かったように感じています。

 

2.Altiumのサイトで、フットプリントや回路シンボル、
  3D(STEP)データが豊富にアップロードされている。

 これが意外に便利で、よく利用しております。

 (上図は、Altium Designerから、インターネット上の公開ライブラリデータにアクセスし、
 部品を自動でダウンロードしたサンプルです。
 回路シンボル・フットプリント・STEPデータをまとめてダウンロードできます)

 

3.半導体メーカーからAltium用のリファレンスデータがアップロードされている。

 こちらも便利で、利用しております。

 (上図は、設計データをダウンロードできるサイトへのリンクとなっており、
 Altium Designerとガーバーデータがダウンロードできます)

 

このあたりのインポート作業は本当に簡単、且つそのままCADデータとして使えるので、
一昔前のガーバー入力やアスキー入力での作業を知る私たち世代にとっては時代の流れを
感じるツールですね!

後編へつづく

@kitaoka

共振解析について②

今回の記事は、実際に行った共振解析と対策についてご紹介します。

上図は、3.3Vの電源面に対し、10MHzから1GHzまでの周波数をスウィープした特性表です。

200MHz、315MHzなどをピークとした共振点が表れています。
面の形状などにより、この共振点の周波数は大きく変わります。

共振対策としては、
・ピーク点の周波数をずらす
・ピーク点の電圧比を下げる
こととなります。

基板設計上での対応としては、
・面の形状を変更する
・対策部品を追加する
の、2点がメインです。

弊社で対応する基板設計で、面の形状変更が容易なケースは
あまり多くない為、「対策部品を追加する」ことが主になります。

上図で示した基板は、位置指定部品などの関係から、面の形状変更は
困難な基板でした。


面形状を変更せず、一部のコンデンサを特性の違う部品に
置き換えた結果がこちらです。


ピーク点が280MHz、390MHzなどに変化し、わずかですがピークレベルが
下がっている事を確認できると思います。

こちらの変更方法でピークレベルを下げる検討を続けようと
思ったのですが・・・部品手配の問題でNGとなりました。
対策用部品の入手性の問題、種類が増えるなどが原因です。


増加が許容された部品のみで対策した結果がこちらです。


約20点の部品追加にはなりましたが、ピーク点が390MHz付近に変化し、
ピークレベルも下げることが出来ました。

昨今、EMC対策の必要性はより高くなっています。
共振解析を実施することで、部品の増加を抑えたノイズ対策、
電源品質(PI)の向上を行ったプリント基板の設計を行うことができます。

弊社では今回紹介した共振解析だけでなく、信号品質(SI)解析にも
対応可能です。

ご興味ありましたらお問い合わせください。

@kitaoka

共振解析について①

今回はプリント基板上の電源共振解析を
実施した事例紹介をしたいと思います。

まず、「共振解析とは何か?」ですが、
多層プリント基板では、GND面の層と、
電源面の層が平行に存在します。


   (4層基板 層構成図)

この例では、2層目のGND層と3層目の電源(VCC)層が
「並行平板」の形となる事で、共振現象を起こし、
ベタ面の形状によって、ある特定の周波数の共振点を
持つことで、共振レベルを増大させることになります。

これを防ぐことを目的としたシミュレーションが、
共振解析となり、プレーン共振解析や、電源共振解析と
表現することもあります。

つづく

@kitaoka

基材について③

前回に引き続き基材についてのお話しです。

今回は、低比誘電率材料について書こうと思います。
弊社の得意とする高速信号伝送にかかわる重要な要素でもあります。

高速信号伝送で必要な特性インピーダンスの計算に当たり、簡易計算式があります。

必要な情報は
伝送パターン(信号線)幅(W)、銅箔厚(t)、基板絶縁体高さ(層間厚)(H)、基材の比誘電率(εr)
となります。

比誘電率(εr)は、媒質の誘電率と真空の誘電率の比 ε / ε0 = εrのことで
特性インピーダンスを計算する際に必要な基材特有の数値であり、
通常のFR-4材であれば4.2~4.8程度の値をとります。

(とはいえ、毎回こちらの計算式を適用するのも大変なので、弊社ではシミュレーションツールで計算したり、簡易計算ツールを公開頂いているwebサイトを使用させて頂いたりしております)

このεrが4.0を下回るものを低比誘電率材と謳っております。
高速伝送用基材としてよく名前が上がるパナソニックのmegtron6材であればεr=3.6程度になります。
(ちなみにテフロン材であればεr=2.6以下だったりします)

なぜ、低比誘電率材が良いかを具体的に言うと・・・
「配線幅を太くすることができる」ということです。

特性インピーダンス(Zo)の値が同じであれば、
εrの値が低ければ低いほど配線幅を太くすることができます。
層間厚が厚ければ厚いほど配線幅を太くすることができます。
銅箔厚が薄ければ薄いほど配線幅を太くすることができます。

「配線幅を太くすることができます」を強く記載した理由ですが・・・全部実現が難しいからです。

まず、銅箔厚を考えます。
通常の基板であれば18μmや、35μmの基材を使用します。
これを薄くする・・・には限度があります。私の知る範囲では9μmが一番薄い基材です。
(3μmという特殊材もあるようですが、使ったことはありません)
また、スルーホール用にパネルメッキを実施しますので、実際はこの基材の銅箔厚よりも厚くなります。

次は層間厚です。
通常の基板であれば板厚が1.6mm程度です。
高速信号伝送が必要となる基板の多くは多層基板です。
層間厚を厚くしようとすると基板の板厚も厚くなりますが、厚くなると穴あけ加工が困難になるなど別の問題も発生します。多くの場合、層間厚は0.1mm~0.2mm程度になることが多いです。

上記2点は多層化・高密度化に伴いどうしても薄くなってしまいがちです。
その為、配線幅も細くなる方向になります。

アートワーク設計を行う立場からすると、配線幅が細くなるのは歓迎したいのですが、
基板製造の立場から考えると製造精度・歩留まりから歓迎されません。

また、もう1点重要な要素があります。
それが表皮効果と呼ばれる現象です。銅箔の表面に電力が集中する現象で、周波数が高くなるほど電流が表面へ集中するため、交流抵抗が増大するという問題が発生します。
こちらを解決するには「表面積を増やす≒配線幅を太くする」につながります。

つまり、「層間厚が薄くなる多層基板で、高速信号を配線したい」場合に、εrの低い低比誘電率材を選択するのは理にかなっているわけです。

ただし、基材も高価・加工費も上がるといった形で、製造コストも大きく変わりますので、全てにおいて低比誘電率材が良いとは言えません。

高速伝送信号を取り扱われる際にはこういった基材の選定も考慮しておりますのでご相談頂ければと思います。

@kitaoka

基材について②

前回に引き続き基材のお話をさせて頂きます。

基板の材料は、基材に樹脂を浸透させた後、樹脂を硬化させて製造されています。

例えば「ガラエポ」と呼ばれている基板は、ガラス布基材にエポキシ樹脂を浸透・硬化させた
基板になります。
安価な片面材として使われる、紙基材にフェノール樹脂を浸透・硬化させた紙フェノール基板など、
基材・樹脂の組み合わせは、用途に合わせて選定する必要があります。

今回は耐熱材についてのお話しです。
と言いますのも、通常の基板であれば周辺温度が0~50度程度の使用環境です。
今回お話しする基板は、周辺温度150度という特殊環境下での使用となっており、
FR-4材では耐熱温度に問題があることが分かったためです。

FR(Flame Retardant)グレードとはNEMA/ANSIで規定された難燃性規格です。
FR-1~FR-5まで規定されており、FR-5が難燃性の最も高いグレードとなっております。
JISでも同等の規格がありますが、弊社ではほとんど使わず、FRグレードが一般的かと思います。
ちなみに、

FR-1、FR-2は、紙基材+フェノール樹脂製
FR-3は、紙基材+エポキシ樹脂製
FR-4、FR-5は、ガラス布+エポキシ樹脂製

と、なっています。

弊社では、FR-1~3に相当する基材はほぼ取り扱いがありませんので、
FR-4とFR-5についてみていこうと思います。

細かく言うと、
FR-4 一般用
FR-5 高耐熱
と、規定されています。

概ね、FR-4は120度以上、FR-5は150度以上の耐熱性となります。

弊社で取り扱うFR-4材は大半が日立化成材の「MCL-E-67」という基材です。
耐熱温度はカタログ値で120~130度です。

この基材では「150度耐熱」に応えることが出来ず、高耐熱材を選定することになりました。
候補としては2つの基材が上がりました。
耐熱温度140~150度の「MCL-BE-67G」
耐熱温度173~183度の「MCL-E-679W」

「MCL-BE67G」ではマージンが無い為、「MCL-E-679W」材を採用しました。
ちなみにメーカーは「FR-5」材としておらず、「FR-5相当」材となっております。

こちらを採用頂き、ユーザ様には問題なく使用いただいております。

特殊な使用環境であることが事前に分かったため、問題となりませんでしたが、
通常のFR-4材を使用していた場合、特性や強度の低下による事故の可能性もあります。
使用環境に応じた適切な基材選定が必要となる例となりました。

@kitaoka

基材について①

今回は基材のお話しをさせて頂きます。

先ずは・・・以前紹介した弊社で作成していたリジッドフレキ基板「MCF-5000I」材なのですが、
製造中止となってしまいました。
屈曲性というメリットだけでなく、低誘電率等、高速信号伝送に向いた良い材料だっただけに
非常に残念です。

で、これだけでは記事とならないので代替材料をご紹介させて頂きます。

それが・・・パナソニック製「R-F775(コア材)」と、「R-FR10(樹脂付き銅箔)」です。

MCF-5000I材と同じポリイミド材で、誘電率等もほぼ同等です。

とはいえ、メーカーも異なりますので、100%互換というわけではありません。
インピーダンスラインの設定等は見直す必要があります。
また、MCF-5000Iに比べ少しコストアップもするようです。

「するようです」という表記なのは・・・弊社ではまだ使用実績が無い為です。

また、現状パナソニック材は入手難という問題もあります。
(台風の影響ですので、解消すると思いますが・・・)

弊社としては今後のリジッドフレキ基板の設計・製造対応はこちらの代替材を使用いたします。

興味があれば是非お問い合わせください。

@kitaoka

基板設計CAD(Altium Designer)で3D(STEP)データ作成!

アルティウム(Altium Designer)を導入しました。

元々はそちらを意図した導入ではなかったのですが、
部品を作りこんでいくうちに・・・

t1 t2

ちょっとやりすぎ!?かとも思いましたが、
ユーザ様が部品の3Dデータを利用されたかったようで、
満足されておられました。

確かに筐体データと基板データをインポートし、
CAD上で当たりの確認等実施できれば出戻り含めた
コスト・時間を減らすことができます。
ただ・・・基板設計者からすると、部品データの作りこみに
時間が掛かってしまうため、STEPデータ出力は・・・^^;;

@kitaoka