タグ別アーカイブ: 基板設計

基板の表面処理について(その3)

以前に紹介した「基板の表面処理について」ですが、
金メッキについて、補足がありますので、その3として紹介します。

以前の記事は、
その1 ①プリフラックス ②半田レベラー はこちら
その2 ③金メッキ(金フラッシュ) はこちら
からどうぞ

金フラッシュの紹介の際、さら~っと「カードエッジ」に触れておりました。
改めてカードエッジ部の金メッキについて紹介します。

カードエッジ・・・と記載していますが、正式にはカードエッジコネクタです。
カードエッジコネクタとは、基板自体を直接別基板のコネクタに刺すことを
目的とした基板端に設けられた端子です。

代表例はPCI-Express等のパソコンの増設基板でしょうか。
他にはメモリーモジュールなどもカードエッジコネクタになります。
(古くはファミコンやスーパーファミコンのカートリッジなどもそうですね!)

カードエッジコネクタは挿抜を伴いますので、接触抵抗の低減、防錆等から
端子部分には金メッキが施されます。

複数回の挿抜で接触・摩擦が発生しますが、金フラッシュのように薄く付いた金メッキでは
すぐに?がれてしまい、防錆等の効果が薄れてしまいます。

そのため、電解金メッキを使用し、厚く金メッキを施しています。

なお、上図でカードエッジコネクタについて、「ハードゴールド」と記載したのもミソなのですが、
純金メッキでは硬度が低い為、カードエッジコネクタのメッキには向きません。
コバルト等を含有した硬質の金メッキを施しています。

カードエッジコネクタ部の電解金メッキは耐摩耗性・耐錆性に優れたメッキ方法となります。
デメリットは・・・価格が高いことと半田付け性が低いことでしょうか。
(カードエッジ部に半田付けすることは・・・ほぼないと思いますが)

金メッキは他にも種類があります。今回紹介しませんが、ワイヤーボンディング用の
金メッキ等もあり、用途毎に最適な金メッキを選択する必要があります。

特殊な用途の金メッキにも対応しますので、ご相談頂けると幸いです。

@kitaoka

基板の表面処理について(その2)

前回に引き続き、基板の表面処理について紹介します!
前回記事の①プリフラックス ②半田レベラー はこちらからどうぞ)

③金メッキ
 銅の上にニッケル下地+金メッキを施した表面処理です。

 電解金メッキや無電解金メッキなど、用途により製法等は異なりますが、
 今回の記事は半田付け部分(レジスト開口部)の表面処理について比較説明
 させて頂くので、金フラッシュについて纏めて記載します。
 (半田付けと異なる用途の金メッキは別の記事にしようと思います)

 金フラッシュ、金フラや前後逆のフラッシュ金、
 ENIG(Electroless Nickel Immersion Gold)等
 色々な呼び方をします。
 弊社では「金フラッシュ」と呼んでいます

下地となるニッケルメッキの影響で、少し薄い金色の外観になります。

カードエッジ部と比べ、金フラッシュ部の
色味が異なるのが分かるかと思います。

・長所
 保管期限が長い(6か月)
 半田濡れ性が非常に高い
 平坦度が高い
 接触抵抗が低い

・短所
 金を使用するので高価
 金メッキ厚は薄い

等があります。

保管期限は、半田レベラーと違いがありませんが、
金フラッシュは、他の表面処理と比較して半田の濡れ性が高く、
表面の平坦度が高いことから、小型や多ピンのチップ部品を
実装する基板に向いています。
また、半田付けしない部分の耐錆性も高くなります。

前回と今回で、基板表面処理の特徴を紹介してきましたが、
一般的な採用数は
フラックス > レベラー > 金フラッシュ
となります。

コストは
フラックス < レベラー < 金フラッシュ
ですね。

なお、弊社での採用数は・・・・
金フラッシュ > レベラー > フラックス
だったりします。

早くから高速ディジタル基板の設計・製造をしていた為、
多ピンのBGAや小型チップ部品を搭載することが多く、
金フラッシュの採用が元々多かったことに起因しています。

用途・用法に応じた表面処理の選択が重要です。
以前のブログで紹介した基材の選定などと併せ、最適な提案をさせて
頂きますので、お悩みの際はお問い合わせいただければと思います。

@kitaoka

基板の表面処理について(その1)

今回のブログは、基板の表面処理について紹介します。

プリント基板は、紙やガラス基材に樹脂を浸透させた絶縁版に銅箔を
張りつけた銅張積層板(Copper Clad Laminate)を加工したものです。
エッチングや積層などを施してプリント基板を製造しています。

名前の通り、プリント基板の導電部分(パターン)は銅です。
空気に触れることで徐々に酸化し錆びてしまいます。

部品実装などで半田付けする部分を除き、レジストを
塗布することで表面を保護し、酸化を防止しています。
(酸化だけでなく、絶縁性等も含めた基板保護になります)

半田付け部分はどうするのか・・・と、いうのが、
今回紹介する基板の表面処理になります。

基板の表面処理は大きく分けて3種類あり、

①プリフラックス
②半田レベラー
③金メッキ

となります。

①プリフラックス
 水溶性フラックスを塗布した表面処理です。
 フラックス、プリフラックス、OPS(Organic Solder preservative)など、
 色々な呼ばれ方をします。弊社では「フラックス」と呼んでいます。

フラックスは無色透明で、何もコーティングされていないように見えます。
プリント基板の製造では最も一般的に使用される表面処理方法です。

・長所
 コストが最も安価
 半田濡れ性が良い
 平坦度があり、チップ部品の実装に適している

・短所
 保管期限が短い(通常、2~3カ月)
 導電性が無い

等があります。

●保管期限について
 適切な保管を行った場合の保管期限になります。
 通常は直射日光を避け、温度25度以下、湿度50%RH以下での保管が目安のようです。
 なお、IPCでは湿度10%RH以下で保管するように定められています。
 (IPCについては後日記事にする予定です)

なお、このフラックス仕上げは部品実装・半田付け前に
塗布されるフラックスとは全く異なる処理です。
区別するために、基板製造時の表面処理を「プリフラックス」、
部品実装前に行う処理を「ポストフラックス」と呼んでいます。

②半田レベラー
 溶融した半田を浸潤塗布し、余分な半田を熱風で吹き飛ばして仕上げる表面処理です。

パッドやランドに半田が付いた外観になります。
長期保管が必要な場合に選択されます。

・長所
 保管期限が長い(6カ月)
 フラックスの次に安価
 半田濡れ性が高く、特にリード部品の半田上がりが良い

・短所
 平坦度が低い
 半田ブリッジが発生しやすい
 スルーホール/VIAの内壁に半田が付く為、穴径が(他の表面処理に比べ)小さくなる

等があります。

平坦度が低いというのが、どういった状態かというと・・・

このように、半田は熱風で吹き飛ばした後に冷えて固まりますが、
半田の多い部分と少ない部分が発生し、凹凸が発生します。
余分な半田が半田ブリッジの発生につながることもあります。

また、半田レベラーには、共晶(有鉛)半田と鉛フリー(無鉛)半田がありますが、
現在は鉛フリーが殆どです。弊社でも指定が無ければ鉛フリーとなります。
(特殊用途でなければ共晶(有鉛)半田レベラーは選択されません)

続いて金メッキなのですが、長くなってしまいましたので・・・
次回もお楽しみに!

@kitaoka

IVH基板 設計事例紹介

今回のブログは、IVHを使用した基板設計の事例紹介をさせて頂きます。

まず、IVH(Interstitial Via Hole)とはなにかですが、
・・・ざっくり言うと、全層を貫通していないVIAのことで、
大きく2種類に分かれます。

1つ目は表層から内層の接続で、ブラインドVIA(Blind Via)
2つ目は内層から内層の接続で、表層に現れない埋め込みVIA/ベリードVIA(Buried Via)
となります。

ブラインドVIAとベリードVIAの断面イメージ

(この2種類のIVHの違いについては、また別の記事でご紹介します)

弊社では通常、ブラインドVIAを使用します。基板層数を半分にし
8層の場合、上層L1-L4、下層L5-L8で分けた構成となります。
<下図参照>

上層L1~4と下層L5~8で、別の回路を配置・配線することが可能になり、
高密度化が可能になります。

他にも様々な組み合わせは考えられますが、工場の設備等によっては製造出来ない
組み合わせも存在しますので、設計構想段階でのすり合わせは必要になってきます。

その中で、弊社で採用した特殊な事例をご紹介します。
目的としては、ベタ面を広くとることで電源・GNDの安定化に加え、
上層回路と下層回路の完全分離とノイズ対策の為に採用しました。
<下図参照>

①L5、L6に上層・下層で使用するIVHのVIAがない為、ベタ面を広く取ることで、
 電源・GNDの安定化につながる
②L5、L6に電源・GNDのベタ面を設けることで上下層の分離(回路的な分離)が可能
③上層と下層をベタ面で分離するため、ノイズ対策を実施しやすい
といったメリットがあります。

元々は、多ピンのBGA部分の電源強化の為に対応した事例となります。

この図の通り、L5には信号VIAが無い為、プレーン(ベタ面)を広くとることが可能です。

デメリットももちろん存在します。
①L1~4、L7~10層と、L5,6層でプレス回数やメッキ回数が異なる
②積層ズレと言った製造上の不具合が発生しやすくなる
といったもので、製造難易度が上がることです。

弊社では今回のIVHによる層構成の検討や、以前の記事で紹介させて頂いた基材の
選定など、ノイズ対策を含めた高速ディジタル設計を得意としており、基板工場と
連携することで、設計難易度と製造難易度を両立する対応を行っております。

ご興味ありましたら是非お問い合わせください。

@kitaoka