電源・信号の重畳(ちょうじょう)について

今回のブログは、信号と電源の重畳(ちょうじょう)について、紹介させて頂きます。

例として、
PoC (Power over Coax)
PoE (Power over Ethernet)
等、信号線に電力を重畳する例や、

PLC (Power Line Communications)
のように、電力線に信号を重畳する例があります。

どちらも信号と電源を1本のケーブルで接続できたり、
敷設済みのコンセントを通じて通信出来たりと、非常に便利です。

この信号と電源の重畳と分離は基板設計上で物理的に
工夫されているので紹介させて頂きます。

同軸タイプの「PoC」を例に挙げてみます。

ホスト機器側で、電源と信号の重畳を、
ターゲット機器側で、電源と信号の分離を行う回路例です。

同軸ケーブル1本で、接続し、ホスト側から電源を給電する為、
ターゲット機器側にコンセント等の電源供給設備が不要になります。

数十Wの電源と、インピーダンスコントロールの必要な高速信号を
同居させるわけですから、アートワーク上で工夫しないと、
信号が大きく減衰したり、反射やノイズの影響を受け、正常に通信できないこともあります。

実際に、Fakra規格の通信が正常に動作せずに困っているとの相談を受けたことがあります。
回路図上は問題となるところが見受けられず、アートワークデータを確認したところ、
明らかに反射の影響が大きく出るデータになっており、信号の重畳・分離を考慮して
設計されておりませんでした。
弊社にてアートワーク設計を見直すことで、正常動作し喜んでいただけました。

ポイントとしては、「反射を起こさない(スタブを作らない)」、
「インピーダンスコントロールを行う」、「部品の適正な配置」
と言った、一般的なことではあるのですが、知識が無いと難しいのかもしれません。
また、ターゲット機器は物理的制約(小型化)が大きいこともあり、設計自体の
難易度が高いことも多いかと思います。

ご興味あれば是非お問い合わせください。

@kitaoka

ホットプラグ/ホットスワップ対応について(その2)

前回に引き続き、ホットスワップ/ホットプラグ対応についての紹介なのですが・・・

今回は、弊社の失敗事例紹介です。


PCI-Eのカードエッジコネクタ部の拡大です。
・・・どこが問題でしょうか?

答えは、
「短いはずのA1端子」に、細いラインが長い端子と同じ位置まで引かれてしまっている。
です。

 

カードエッジコネクタは、抜き差しを繰り返すという特性上、接触抵抗低減を目的に、
電解金メッキを施します。
問題となった「細いライン」は、この電解金メッキ用の通電用ラインとなります。


上図は、A1端子部の拡大写真です。
折角の挿抜検出用端子が、時間差を検出できなくなっています。

 

短い端子用のみ、電解金メッキ用通電ラインを設計工程時に設けていたのですが、製造工程時に、その短い端子に誤って追加されました。

長い端子用の電解金メッキ用引き出しラインを、製造工程で付与していたのが不具合の
遠因になっていた為、今後は基板設計上で対応し、CAM出力するように改めました。

市販製品の中には、この短い端子を設けていない基板を見かけたこともあります。
使用用途上、不要なケースもありますが、規格上設定されている端子となりますので、
対応は必要かと思います。

最後に、品質上も問題無く ↓

@kitaoka

ホットプラグ/ホットスワップ対応について(その1)

今回のブログは、ホットプラグ/ホットスワップ対応について紹介させて頂きます。

ホットプラグとホットスワップ、どちらの用語も同じ意味でつかわれることが多いようです。

どちらも機器の電源が入った状態で「抜き差し・交換できる」ことを指します。

身近なもので言うと、USB機器が代表例でしょうか。
USBメモリは、パソコンが起動している状態でも抜き差し可能ですね。

なぜこのような説明をしたかと言うと、
ホットプラグ/ホットスワップ対応は、コネクタや基板上で物理的に工夫されているからです。

上図はUSBコネクタと、PCI-E基板のカードエッジ端子部分です。
よく見ると長い端子と短い端子があります。

この長さの違いがホットプラグ/ホットスワップを実現しています。

つなぐ時を考えます。
コネクタに挿入していくと、先ず長い端子部分がPCなどのHost機器と接触します。
電源が供給され、機器の準備がされます。
わずかな時間差で、短い端子が接触することで、準備された機器から
データの送受信が始まり、正常にデータの通信が始まる・・・
と言う流れになります。

取り外す際は逆の流れで、
短い端子が切断され、データの送受信が途切れます。
これを検知した機器が安全に電源切断できる準備をします。
続いて長い端子も切断されますが、準備出来ているため、
安全に電源切断される・・・と言う流れになります。

USB Type-Aコネクタでは、4本の端子があり、
長い2端子(電源とGND)と、短い2端子(データ線)となっています。

PCI-E基板では、殆どが長い端子(電源とGNDや、各種データ線)で、
短い端子(挿抜検出端子)は端の方にあるだけです。
なお、端にあるのがミソで、x16等の長い基板を抜き差しするときに、
多少斜めになっても効率良く検出できるようになっています。

少し長くなったので、今回はここまでとさせて頂きますが、
次回、引き続きホットプラグ/ホットスワップ対応について
・・・の失敗談を・・・^^;

@kitaoka

バックドリル工法について

今回のブログは、バックドリル工法について、紹介させて頂きます。

バックドリルとは

・ビアのスタブを除去する為の工法

となります。

具体的な例として・・・

上図は、8層基板の断面図で、信号がビアを介して1層目から3層目に接続されています。
4層目から8層目のビア部分はスタブになります。

このスタブをドリル加工で除去する工法を「バックドリル」と言います。

このような工法が生まれた背景として、ビアのスタブが

・アンテナとなる為、放射ノイズの問題
・インピーダンスの不連続による伝送損失
・反射による問題

など、信号線の高速化に伴い無視できなくなった為です。

具体的な基板加工としては、積層・パネルメッキ等の一連の加工が終わった後、
スタブ部分をビアのホール径よりも大きいドリルで削り取ることとなります。

基板の厚み公差、ドリル加工での深さ方向の公差など、加工時に生じる公差と基板自体の歩留まりを考えると、完全なスタブ除去は難しく、写真の通り、多少のスタブは残ってしまいます。

なお、デバッグ結果から、ある一定の層を除去するだけでも
特性が改善されるとの評価も得られております。

思想は異なりますが、ビアのスタブを無くす手法として、ビルドアップ基板があります。
ビルドアップ基板と比較したメリット・デメリットを上げてみます。

・メリット
ビルドアップ基板に比較すると基板コストは低い
貫通ビアである為、設計は比較的容易

・デメリット
量産に向かない
高密度化には向かない(ドリル加工であるため、狭ピッチでの加工が困難)

試作や少量の製造であれば非常に効果のある製造工法かと思います。
ご興味ありましたら是非お問い合わせください。

@kitaoka

パッドオンビア+穴埋め工法について(製造)

前回に引き続き、「パッドオンビア+穴埋め」の製造工程について、紹介させて頂きます。

標準的な基板とパッドオン+穴埋めの基板では、パネルメッキ後の工程に違いがあります。

①積層
②ドリルによる穴空け加工
③パネルメッキによる導通の確保

この後、レジストやシルク・表面処理を行うと、標準的な基板となります。

「パッドオンビア+穴埋め」ではパネルメッキ後に、標準外の穴埋め工程が必要になります。

④樹脂(または伝導性ペースト)充填
⑤硬化・平坦化
⑥ふたメッキによる導通確保

この標準外の作業は、人手によるものが大半ですので試作ならではの工法になり、コストも
少しお高くはなりますが、基板サイズに制約が有る際や、出来るだけ小型化したいなど、
基板やデバイスピッチの狭小化を求める製品向けに提案しております。

@kitaoka

パッドオンビア+穴埋め工法について

今回のブログは、パッドオンビア+穴埋めの基板工法について、紹介させて頂きます。

そもそも、パッドオンビアとは何か?から紹介させて頂きます。

パッド(Pad)とは、部品を取り付けるために設けられた銅箔部分(表面処理によって、金メッキや、半田メッキ等が施されます)のことを指し、
このパッド部分にビア(VIA)を設けることを、パッド オン ビアと呼んでいます。

上図のように、標準的な設計では、部品から引き出しラインを引いてパッドの外にビアを設けます。
一方、パッドオンビアは、その名の通りパッドの上にそのままビアを設けるため、標準的な設計に比べ、部品間隔を詰めたり、配線を多く通すことができる為、基板の小型化に有効な手法となります。

デメリットももちろんあります。
ビアを設けることから、穴が開いてしまいます。
部品実装する際、この穴に半田が流れ込むことで実装不良となる恐れがあります。

放熱パッド等であれば、半田が流れ込まないようにパッドの形状や、レジスト形状を工夫することも可能ですが、狭ピッチBGAのパッドや2端子チップのパッド等、工夫することが不可能な形状も存在します。

 

 

ここで登場するのが今回紹介する「パッドオンビア+穴埋め」という工法です。
穴が問題になるなら塞いでしまえ!
と言うことですね。

樹脂や導電性ペーストでビアの穴を塞ぎ、蓋メッキを施すことで導通を確保し
実装上の問題点をクリアにします。

ただ、工法が標準外になりますので、次回ブログでそのあたりを紹介できればと思います。

@kitaoka

Altium Designerの運用(CAM)

Altium Designerは、標準的に下図のフォーマットで出力が可能です。

他のCADシステムではオプション扱いになっている事もあるフォーマットが、
Altiumでは標準で用意されています。
国内での製造では特に困りませんが、海外で基板製造する際は拡張ガーバーフォーマット(RS-274x)か、ODB++フォーマットを要求されます。
実装を伴う場合は特にODB++フォーマットが要求されることが多くなりつつあります。
今後は「無いと困る」ことになりそうです。

弊社のCAM対応は基本的に、拡張ガーバーフォーマット(RS-274X)での対応です。
Altium Designerの導入前に、ODB++フォーマットのデータ出力依頼を受けたことがあります。
当時使用していたCADではオプション扱いで弊社所有しておらず、ODB++フォーマットの出力対応が出来ず、困った記憶があります。
(この件は、お客様の必要とする情報がODB++必須ではなかったため、他のフォーマットや情報で対応可能でした)

常時使用する物ではありませんが、豊富なフォーマット対応で対応範囲が広いことは、いざという時に対応できるのは心強いですね!
回路図入力~ライブラリ登録~PCB設計~シミュレーション~CAMに加え、3D(STEPデータ)の入出力と、一通りすべてがパッケージ化されている、非常によくできたツールだと思います。
また、時代の流れに対応した機能を標準的に搭載してくれるのはありがたいですね。

@kitaoka

基材について(耐熱温度編)

以前のブログ「基材について②
で、基材の耐熱温度について記事にさせて頂きました。

今回、弊社で取り扱いのある基材を中心に、耐熱温度も交えて、改めて紹介させて頂きます。

弊社では、ガラス布基材にエポキシ樹脂を浸透・硬化させた「ガラエポ」と呼ばれる
基材を標準的に取り扱っております。
NEMA/ANSI規格で規定されたFR-4、FR-5が該当します。
(FR-1~FR-3について、弊社ではほとんど取り扱っておりません)

FR-グレードについて、基材の種類、対応するJIS規格、用途(絶縁性・耐熱性)の一覧を示します。
弊社ではJIS規格で呼称する機会はほとんど無く、「FRグレード」で呼ぶことが一般的です。

FR-4の耐熱温度は120度以上、FR-5の耐熱温度は150度以上となっており、FR-5材がより高耐熱材として規定されています。

弊社で対応可能な基材の一部ですが、具体的な耐熱温度の一覧をメーカーカタログより抜粋しました。

通常、IC等の耐熱温度がそれほど高くなく(85度~105度程度が一般的です)、基板自体にそこまでの耐熱性が要求されない為、FR-5グレードについての実績はそれほど多くありません。

特殊な事例として、「周辺温度150度」という特殊環境での使用を前提とした基板で、耐熱温度確保のために、FR-5相当の「MCL-E-679W」を採用した実績があります。

また、耐熱性ではなく高速伝送を目的として、高性能FR-4材の「CCL-EL230T」を採用した実績もありますが、こちらの事例は今後改めて紹介させて頂きます。

ガラス布基材・エポキシ樹脂(FR-4/FR-5)以外の基材例も載せてみます。

高周波・高速伝送対応基材として使用される「Megtron6」材は、「ガラエポ」ではない為、
FRグレード品ではないことが分かります。

一概に「プリント基板」と言っても、目的に併せて検討する必要がある場合もあります。
高温環境下や、高周波・高速伝送など、特殊な用途の際はぜひ相談ください。

@kitaoka

Altium Designerの運用(アートワーク設計)

Altium Designerの運用について、今回はアートワーク設計について紹介します。

 

 

導入で触れましたが

(簡易)自動配線
等長配線
シミュレーションツール

 

 

など、設計者が使いたいツールが豊富に内蔵されており、
「軽く確認したい」という際には威力を発揮します。
とはいっても、自動配線ツールやシミュレーションツールも
事前準備に手間がかかるのには変わり有りません。
等長配線ツールにしても、思い通りにいかないことも・・・無くは無いですが、
標準的に組み込まれているので、いざという際は使えます。

 

また、導入後に感じた不満点も挙げてみます。

・各コマンドに対するレスポンスが微妙に悪い。
・慣れ・・・という部分が大きいかもしれませんが、全体的な操作感はそれほど良くない。
・ツール自体が非常に重く、特にCADのBootに非常に時間がかかる。

と、いった点でしょうか。

複数のファイルを次々にオープンし確認する・・・
と言った使い方には向いていないように感じます。
(普通は、そういった使い方をしないので個人的な感想です)

個人的に、普段は別のCADをメインで使っているため、第三者チェック等で稀に使用する際に
すこ~~~しストレスを感じたり感じなかったり。^^;;;

@kitaoka

Altium Designerの運用(ライブラリ)

運用を進めていくうえで、良かった点・悪かった点を紹介します。

今回はライブラリについてです。

・良かった点

先ずは導入でも触れましたが、ネット上で公開されているクラウドベースの
ライブラリデータの豊富さです。
何といってもこれを語らずにはいられない!・・・と、個人的に思っています。

シンボル・フットプリントを公開しているサイトも存在はしますが、
エクスポート~インポートにワンクッションが発生するのに比べ、
シームレスに使用できるのが非常に便利です。

とはいえ、回路シンボルのみ存在し、フットプリントや3Dデータが登録されていない
ケースもあって、残念な思いをすることも・・・
(贅沢になっています^^;)

但し、カタログページへのリンクがあったりするので、何かと便利に使っております。

 

・悪かった点

Altiumだから・・・・と言うわけではないのですが、既存ライブラリの移行です。

CADが変わるということは、データの互換性も基本的にありません。
その為、毎度毎度、運用に頭を悩ませることとなります。

コンバーターツールも存在しますが万能ではなく、属性データ等の欠落がある為、
データの補完が必要となります。
使えないというわけではないのですが・・・^^;

現状、弊社ではクラウドベースのライブラリと、新規での追加を併用して運用しております。

次回へ続く

@kitaoka